アルファシンシンドロームと言われるのは意思疎通が出来ていないから?
こんにちは!
犬になりたい犬育ブロガーの瀧沢かいるーです。
今回は「アルファシンドローム」にまつわる大ウソの話です。
パックリーダー論とともに、いまだに犬のしつけの中に深く根付いている「アルファシンドローム」という考え方。
犬が攻撃的だったり、なかなか言うことを聞かない時の説明としてよく用いられてしまう言葉です。
「犬に優しい」を謳うトレーナーですら当たり前のようにこの言葉を使うのですから、もはや何が「犬に優しい」なのかわかりません。
そこで今回は、一般的に「アルファシンドローム」と言われているような犬たちがどんな状態なのか、なぜそう言われてしまうのかについて詳しくお話します。
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目次
アルファシンドロームとは?
家族という群れの中で、犬が自分が一番えらく、自分以外の家族を下の地位であると勘違いした状態のことです。
権威症候群ともいい、アルファシンドロームである犬は飼い主に対して攻撃的になります。こういった犬たちには飼い主がリーダーであることを認識させるために、体罰も含む厳しいトレーニングが必要だと言われてきました。
要は、犬を厳しく罰するための免罪符です。
アルファシンドロームはすでに否定されている
犬が人のリーダーになったと勘違いしている、などという考えは非常にナンセンスです。
野生のオオカミは家族単位で生活し、家族の中に階級はなく地位を巡って争うことはないということがわかっています。オオカミの血を引く犬も同じであり、人間とともに暮らすイエイヌはオオカミよりももっと順位付けの意識は希薄です。
詳しくはコチラの記事わたしがパックリーダー論を否定するワケ
この説とともに、「アルファシンドローム」もすでに否定されているのです。
なぜいまだになくならないのか?
ではなぜ、すでに否定されているはずの「アルファシンドローム」はいまだに犬のしつけの中に深く根付き、なくならないのでしょうか?
それは、犬の問題行動を説明するのに一番手っ取り早い方法だからです。
例えば犬が攻撃的である場合、確かに犬の性格や飼い主の接し方(力で服従関係を気づいている場合)などによっては上位の座を狙っての攻撃であることもあります。しかし、それは本当にごく一部です。
一口に「咬む」といっても、性格、環境、ストレス、飼い主の接し方、過去のトラウマなど、理由は数え切れないほどあります。にも関わらず、原因を確かめもせずに「この子はアルファシンドロームだ」と言っているにすぎないのです。
学生時代に研修に行った訓練所でも、特に昔気質のトレーナーはこの「アルファシンドローム」が大好きです。こう言っておけば全て解決すると思ってるみたいに、何でもかんでもこう言います。
過去に叩かれたことがあるのか、明らかに人の手を怖がって攻撃的になっている犬にでさえ「この子はアルファシンドローム」という診断を下し、首にチョークチェーンをはめてトレーニングし始めたのには驚きました。あの子はよくなったんだろうか…悪化していないといいな。
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「アルファシンドローム」と言われる犬たちはどういう状態なのか?
間違いだらけの「アルファシンドロームを引き起こす原因」
今回この記事を書くためにアルファシンドロームについて調べている時、「アルファシンドロームを引き起こす原因」という間違いだらけのとんでもサイトを見つけました。
- 犬に先に食事をさせる
- 犬に前を歩かせる
- 飼い主の目線より高い位置に犬をおく
- 一緒に寝る
パックリーダー論で「人がリーダーになるためにやるべきこと」とされているのと全く同じですね。
また、犬に思い通りの生活をさせると自分が一番偉いと思い込む、というような記述もありました。なので自由にはさせず、飼い主がしっかりと犬を管理しなければならない、と。
この記事は2007年に書かれた記事だったので少し古いと思われますが、それでも言い方が変わっただけでいまだにアルファシンドロームに対する考え方はこの時と大差ないでしょう。
「リーダー」ではなく「わがまま」
では、犬に思い通りの生活をさせたせいで飼い主の言うことを一切聞かなくなった場合、それは本当にリーダーになったつもりでいるせいなのでしょうか。
結論から言うと、ただ単に「わがままなだけ」です。
例えば、犬の邪魔を一切せず、遊びたいだけ遊ばせてやり、散歩中も好きなだけ引っ張らせて行きたい方に行かせ、好きなおやつを欲しがるだけあげて、好きな場所で寝かせ、好きなことを好きなだけやらせて、飼い主の言うことを全く聞かず気に入らないことがあると唸ったり咬んだりする犬が出来上がったとします。
そんな状態の犬を、「リーダー」といえるでしょうか?
このすぐ唸って咬む犬は、「リーダーになった」のではなく、ただ単に「わがままなだけ」なのです。
要は我慢することを教わっておらず、「わがままになって欲求をおさえられない」状態なわけです。好きなことを好きなだけ出来る生活が当たり前になると、自分の思い通りにいかないことがあった時にすぐに爆発するのです。
甘やかされて育った人間の子どもが、わがままですぐに癇癪を起こすのと同じです。
こんなものは、リーダーでもなんでもありません。
これが、一般的に言われるような、犬が飼い主の言うことを聞かず攻撃的になる、という状態です。
では、こういう時はどうしてあげればいいのでしょうか。
なぜ「アルファシンドローム」と言われるのか?
一般的に言われているアルファシンドロームの状態を「わがまま」と説明したばかりですが、わたしはアルファシンドロームと言われてしまうような犬たちが、わがままだとは思っていません。
ではなぜ、言うことを聞かないのか。飼い主の言うことを無視しているように見えるのか。
それは、意思の疎通が出来ていないせいだとわたしは考えています。
言うことを聞かなかったりというのは、犬にも犬なりの理由があるのです。
アルファシンドロームの一般的に見られる行動として、以下のようなものが挙げられています。
- 散歩に行くと先に歩く。
- 他の犬とすれ違うと吠える。
- 散歩中にリードをくわえる。
- 吠えて飼い主の言うことを聞かない。
- 飛びつく。
- 自分のものを守ろうとする。
- マウンティング。
- 尿をかける。
- 飼い主の手をじゃれて噛む。
- 呼んでも来ない。
- 食事中に威嚇する。
- 散歩の途中で動かない。
- 排尿排便後に地面をひっかく。
- 人の肩の上にのしかかる。
- ソファにのってどかそうとすると威嚇する。
これを見ると、「犬がリーダーになろうとするための行動」とは何も関係がないことがわかります。
3,4,7はストレス行動としてよく見られるものです。
呼んでも来ないというのは、単なる練習不足、もしくは飼い主のことが嫌いで行きたくないだけです。
自分のものを守るだとか、食事中に近づくと威嚇するなんていうのは犬の本能であり、もしくは日常的に飼い主に
何かを取り上げられていると物に対する執着が強くなるので、その場合は飼い主のせいといえます。
尿をかける、排尿排便後に地面をひっかくというのも犬の本能であり、多くの犬が自然になることです。
散歩中に動かなくなるなんていうのとアルファシンドロームとを結びつけようというのなんてもはや冗談としか思えません。
どれもこれも、犬がリーダーになるための行動とはとても考えにくいものです。
またこれに対する対処法というのがまたとんでもないのです。
散歩は犬のペースに合わせてはいけない、犬が前に出たらすかさず方向転換しろ、などなど。そんなことしたら犬の首が絞まるのに…
また、スワレ、フセなどの服従訓練を行い、食事は食器に一口分ずつ入れ、食事を与える飼い主に対する服従心を持たせる。
そして、「犬の意思」というのは基本無視してかまわない。
おいウソだろ。
これらの行動がアルファシンドロームとして認知されている原因は、犬との意思疎通が出来ていなかったり、犬のことをよく理解していないためです。
犬がなぜこういった行動をするのかがわかればアルファシンドロームだなんて思わないでしょうし、犬の習性について理解すれば間違いであることがわかるはずです。
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犬の行動の意味を考える
常に、なぜこういうことをするのか?を考えましょう。
呼ばれたら来ないとか命令に従わないなんていうのは、飼い主を見下しているからではなく、そうしたくないから、と考えたほうが自然です。
ソファからどかそうとすると威嚇するのは、そこが犬のお気に入りの場所だからでしょう。
散歩の途中で動かなくなるのは、単純に疲れたか、もしかしたら足が痛いのかもしれません。
アルファシンドロームだからと簡単に片付けてしまうのではなく、一つ一つ、行動の意味を理解し、その時の犬の気持ちを考えてあげなければなりません。
たしかに上記のような行動は修正しなければならないものも含まれますが、だからといってリーダーになる必要はありません。
うちの犬たちはオスワリもフセもマテもろくに出来ませんが、上のリストのような行動はしません。時々、テンションが上がると飛びつくことがありますが、わたし以外にしないし、一応加減というのをしているようなので問題ありません。
これはわたしが禁止されている「犬の意思を尊重する」ということをしてきたためです。
わたしに対する服従心というのは皆無でしょうが、わたしのことが好きなのは伝わってきますし、仲間として認めてくれている、というのも伝わってきます。いつもご機嫌でよく笑う子たちで、一緒に暮らしていて楽しい子たちです。
わたしが目指すまったり犬は、パックリーダー論やらアルファシンドロームやらで服従訓練をした犬では、決してなれないのです。
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